ほんもんぶつりゅうしゅう

2021-04-29 10:14

4月29日の「毎日ぶっきょう」

なみなみと水が注(そそ)がれたグラスに、さらに水を注ぎ込むと注いだ分だけあふれます。それと同じで、自分の知識や技術、経験で満たされているところへ新しいものを注いでも、やはり注いだ分だけあふれかえってしまい、残念ながら折角の学びはなかなか実を結びません。だからと言って「これまでに蓄積したものを全て捨ててしまえ」ということではありません。ただ、教えてもらう時の姿勢として、我を出さない、素直に聞く、満額で受け取ることが必須。空っぽのグラスに水を注いでこそ注いだ分だけ満たされていく、これが教わる側の心得です。

 

鵤工舎の創設者・小川三夫さんは「最後の宮大工」と称された西岡常一氏のたった一人の弟子です。小川さんは「批判の目があったら学べない」「素直じゃなくちゃ」と仰った上で、こう述べておられます。

「ちょっと知識があったとか、中途半端な勉強してきてると素直に聞けねぇから往々にして間違いが起こる。今は学校でも時間がないから深く教えない訳でしょ。ちょっとした知識だけ持たせて世の中に出してしまう。だから、素直に物に触れることができない子が多いですよ。そういう子は素直になるまで怒り倒さなければ駄目なんですわ。こっちも大変、向こうも大変ですよ。」

 

もし、自分一人で全てを学び尽くし、全ての技術を身につけ、全ての経験を網羅できるのであれば、人に聞く必要も、誰かに教えてもらう必要もありませんが、そういう訳にはいかないのが人生です。自分で自分を磨き上げるには限界があるからこそ、誰かに教えてもらう、鍛えてもらう必要があります。その際に必要なのは「我を出さない」「我を引っ込める」「ひたすら受け取る」という《辛抱》です。自分では気づけない可能性を見つけ、引き出してもらえるのも、素直に教えを受けてこそだと言えます。そう思うと、未知の自分へと成長していく鍵は「辛抱力(しんぼうりょく)と言えるのではないでしょうか。

 

☆朝参詣の御法門は【ここをクリック】(YouTube)