隆宣寺

「人の振り見て我が振り直せ」というように、人の良い所・悪い所を目にした時に他人事で終わらせず、良い所は見倣い、悪い所は戒めにする心がけを持つことで、自分自身を改善する糧にすることができます。しかし、そのことを肝に銘じて実際に行動に移せている人は、果たしてどれだけいるでしょうか？

残念ながら、人の良い所に興味関心が持てなかったり、それどころか謂れのない批判や嫉妬、恨みなど、実にネガティヴな感情を抱いてしまい、それを口にしたり、相手にぶつけたりする人もいるぐらい。更には、人の悪い所を見て「あの人がそうするなら、私だって」と同調する人だって出てくる始末です。

そう思うと「人の振り見て我が振り直せ」というのは、確かに素晴らしい教訓、人生の心得ではあるものの、それを実際に人生に活かすとなれば、そう簡単なことではなく、むしろ悪用されることすら起こり得る。こういった人間の本性を当然、仏様はお見通しで、そのために正しく生きる道を教えてくださっているのです。

つまり、どんなに素晴らしい薬があったとしても、どんなに素晴らしい方程式があったとしても、それを「素晴らしい」と感じる心が無ければ、評価されることもないし、実用されることもありません。だからこそ、まずは【心】をなんとかしないといけない、そのために出来ることが仏教にはあるのです。