ほんもんぶつりゅうしゅう
2018年10月30日
Q なぜ当宗は「日蓮宗」といわず「本門佛立宗」という宗名なのですか。

Q なぜ当宗は「日蓮宗」といわず「本門佛立宗」という宗名なのですか。

A 宗団名としての「本門佛立宗」は開導日扇聖人が1857年(安政4年)ご開講に際して選ばれた宗名なのですが、「佛立宗」(ぶつりゅうしゅう)という名称は開導聖人が初めて用いられたものではなく、宗祖日蓮聖人も門祖日隆聖人も用いられた宗名なのです。
 
末法の世に法華経本門八品の教えに基づいて上行所伝の御題目を弘められた日蓮聖人はご自分を一宗の開祖だとお考えになっておられたのでしょうか。否
「日蓮は何れの宗の元祖にもあらず、又、末葉にもあらず」(妙密上人御消息)
とおっしゃっています。
 日蓮聖人は釈尊が説かれた法華経の教えを末法の世に伝え弘めるお使い、使者とご自身を規定しておられました。ですから『法華初心成仏抄』というお書き物の中で聖人は、「釈尊が説かれた数多くの教えの中でも法華経は最勝、第一の教えであると釈尊ご自身が定めておられる。従って法華経の教えに基づいて立てられた宗は釈尊ご自身によって立てられた宗ということになる。故に宗名は“法華宗”あるいは“佛立宗”とすべきなのである」(意訳)
と記しておられます。
 日蓮聖人の教えを体系づけ再興された日隆聖人も『弘経抄』という著書の中で、
「末法の世に日蓮大士によって弘められた宗は法華経本門の教えに基づくが故に根本の宗旨である。故に釈尊ご自身によって立てられ、上行菩薩にその弘教を託された根本の宗旨は“佛立宗”という宗名がこれにふさわしい」(取意)
とされています。
 開導日扇聖人はこうした蓮隆両祖のご教示に基づき、ご開講に際し「佛立宗」と名乗られたのですが、では、この佛立宗なる名称の上になぜ「本門」の二文字を冠せられたのでしょうか。
「天台宗と紛(まぎ)れぬように、本門と申す也」(扇全六巻八二頁)
とご説明されています。
 中国の天台大師を開祖と仰ぎ、伝教大師最澄が日本へ学び伝えた天台宗も法華経を根本聖典としています。
 しかし、天台宗は歴史上の釈尊が説かれた法華経の法門、すなわち迹門の法華経に重きを置いた宗派であるのにたいし、日蓮聖人は歴史上の釈尊が自身の本体、元の姿は永遠のいのちを備えた久遠本仏であることを明かした上で説かれた法門、すなわち本門の法華経を依りどころにして上行所伝の御題目を信唱する宗旨をお弘めになりました。
 開導聖人はこの点を明確にするため佛立宗の宗名に「本門」の二字を冠せ「本門佛立宗」という宗名を選ばれたのです。
 筆者は日蓮聖人の流れを汲む諸教団で構成される「日蓮聖人門下連合会」に理事として出席していました。その席上、ある時、他の教団の宗務総長さんが私にこう話しかけてこられたことがありました。
「福岡先生は本門佛立宗さんですよね。本門佛立宗はいい名称です。私は日蓮宗という名乗り方はおかしいと思っております。日蓮聖人が勝手に開いた宗旨のようなイメージを与えてしまいますからね。釈迦牟尼仏ご自身が立てられ、日蓮聖人が法華経本門の教えに基づいて伝えられた宗旨だから本門佛立宗、私もこれが日蓮聖人の宗旨としてもっともふさわしい宗名だと思います」と。