ほんもんぶつりゅうしゅう
2018年10月01日
海外弘通だより~サンマリノ編
焦土の日本を映し出した『トランクの中の日本~戦争、平和、そして仏教~』展。京都佛立ミュージアム初の海外展示がサンマリノ共和国で開催されたことに大きな意味を感じます。京都の小さなミュージアムの活動が遠く海外にまで羽ばたきました。これは小さな兄弟の尊い命に導かれてきたようでもあります。そして、この展示を通しより多くの人々の平和を求める心に触れ、この特別展がゴールではなくあらたなスタートであるようにも感じます。
京都佛立ミュージアム主催『トランクの中の日本~戦争、平和、そして仏教~』展は、サンマリノ共和国国会議事堂に於いて7月29日まで延長開催されました。京都では10月8日までの開催です。

またサンマリノ特別展開催期間中に京都の会場を訪れたある来館者から、下記のような詩をお預かりしたと報告が送られてきました。これも併せてご紹介させていただきます。ありがとうございます。

おもかげ
一.
兄は私のなきがらを負ぶいひもに背負い
一面のがれきの中を
裸足の足のまま焼き場まで歩いてきた

私のからだが火床に置かれ
肉のかたまりが焼ける脂のはぜる音が
兄の耳をするどくとらえたとき
兄は私に向かい
何かをこらえるように顔を上げ
気をつけ の体勢で天に応えた

あまりに小さな私のからだは一瞬に熔け
あとかたもなく消え落ちた

逃れられない災厄の連鎖が
破壊と荒廃を繰り返しもたらし
天地はただ
たえ間ない絶望の堆積で形成されていた

あの日
骸となり灰となった私は
焼き付けられた記録として
そのおもかげを
兄とともにこの世に残された


二.
にいさん
ぼくたちは なぜ生まれてきたんだろう
地獄を見るために 戦禍にまみれるために
生まれてきたんじゃない
にんげんとして生きるため
自分らしく成長するため
この世に生を受けたのです

それでも ぼくはこのみじかい命脈が
にいさんと共にあったことを誇りに思います
その生涯が 悲惨で哀れであればあるほど
にいさんの思いがぼくの中であふれます
ぼくは にいさんのおとうとに生まれて
ほんとうに しあわせでした
あの一瞬に残されたぼくたちのおもかげが
それを伝え 語るのです
もう二度と誰にも消させない
明日のいのちの 寄る辺となるのです

―ジョー・オダネル「トランクの中の日本」
焼き場にて、長崎―