ほんもんぶつりゅうしゅう
2020年10月01日
海外弘通だより~ブラジル編  茨木日水上人 御50回忌の年に  ブラジル仏教初祖の称号公認 日本移民の日が茨木日水上人の日に
今から112年前の明治41年(1908)6月18日、781人の日本人移民を乗せた第1回移民船・笠戸丸がサントス港に入港しました。その移民の中に、当時、東京・清雄寺に所属していた22歳の青年僧、茨木現樹師(のちの日水上人)が乗船していました。それは、第4世講有御牧日教上人から使命を受けてブラジルに仏教を伝えるためでした。
 仏教はインドから東へ東へと中国を通って日本に伝わりましたが、太平洋に阻まれて、それより東には伝わりませんでした。その壁を乗り越えて、歴史上はじめて南米に仏教を伝えたのが茨木日水上人なのです。日水上人はご遷化までの63年間、ご存命中に7ヵ寺を建立し、そのほか親会場や郊外組、そして特に弟子信徒を多く遺されました。
 その日水上人が、御50回忌を迎える本年、去る7月23日にサンパウロ市よりブラジル仏教初祖という「パドロエイロ」の称号を公認され、ブラジル宗教史にその名を大きく刻まれました。
 このような称号はブラジル仏教界では今後、誰にも許されることのない尊称であり、日水上人のお立場を確固たるものにし、ゆくゆくはブラジルの歴史教科書に仏教史の1ページとして掲載されることになるでしょう。しかも日水上人が初めてブラジルに伝えたその仏教とは、無二亦無三、真実法華経・本門八品所顕上行所伝の佛立仏教です。つまり、仏教=佛立という本来あるべき姿が史実としても確立できたことは大切な報恩事業といえましょう。
 なお、この度の称号公認と同時に、サンパウロ市が日本移民の日でもある6月18日を「ブラジル仏教初祖・茨木日水上人の日」と制定し、サンパウロ市年間公式日程の中に組み込んだことも特筆すべき事です。
事実、112年前のその日には、笠戸丸下船直前に日水上人は水野龍、茨木千代、茨木信太郎と遠藤豊之助といった信徒とともに御題目の一座を設けてお看経されました。それがまさにブラジル最初下種・ブラジル仏教立教開宗となった日であり、その主人公・ブラジル仏教初祖・茨木日水上人の日となったのです。
 この度の称号公認・記念日制定は仏祖のご加護はもとより、歴代御講有、御導師方や弟子信徒のご奉公の賜物と言えます。
その他にも日系市会議員、野村アウレリオ氏が法案を提出し働きかけ、市議会ではじめて公に可決されたものです。同氏はブラジル社会民主党に属し、労働者党と並ぶブラジル最大政党の1つです。日系政治家としては5回も当選しており、多大なる社会貢献やこの度の成果を顕彰して、来る10月18日の日教寺における全国決起大会後、宗内外に宣揚しての称号公認式で高崎日現ブラジル教区長より随喜状をいただかれることになっています。
 ところでパドロエイロという称号は、ブラジル宗教文化の上においても最大級の重みがあり、地域に根付いているものです。「その方に従えば守護される」という信仰に基づくものであり、女性でその格に当たるのはキリスト教でいう聖母マリアのみです。
 しかし、このような公認を得ることは簡単ではなく、史実に基づかなければなりません。そのために日水上人のご奉公歴・生き様や、ご信者がいただかれた数々のご利益等は、『日水上人伝』という書籍によって簡単に証明することができましたが、僧侶としては「初祖」の裏付けとなる公式記録がなかなか見つかりませんでした。
 しかし、移民100周年の時の研究の結果、サンパウロ州公共資料館に最大の証拠が発見されました。112年前の移民船・笠戸丸の下船名簿の原本です。そこにあった茨木友次郎(日水上人)の職業欄には「僧侶」とはっきり書かれていたのです。
 ブラジルは移民として「労働者」を求めていたのであり、「聖職者」の渡航は許されていませんでした。しかし上人は強制送還をも恐れず自らのお立場、日教上人からいただかれたご使命を入国時に一言で「僧侶」と宣言されたのです。それが見事に明記されているのです。このことから改めて感得させていただけることは、日水上人は今、パドロエイロになられたのではなく、サントス港到着の初日からそうであられたということです。
 今でこそブラジルに11ヵ寺、加えて教会や親会場があり、教務の数も20名を超えるようになりましたが、今でも、どこへご奉公にあがっても不思議に日水上人のお種まきに出会います。「なんとなくこの人は信心強盛だな」というようなご信者は、よく聞くとお父さんか、お爺ちゃんか、教化親が日水上人にお仕えなされた方です。私たちはいまだに日水上人のお徳をいただいているとも言えますが、同時にその上で胡坐をかいているとも言えます。
 日水上人の人生は、どん底から這い上がりの連続でありました。今の私たちも同じように這い上がりたいですし、佛立信心の力で必ず救われるものと信じてなりません。
 このコロナ禍にあって、来る11月1日の御50回忌に御講有巡教に来ていただくことは叶いませんでした。しかし多くのご信者はそのさみしさについて、「きっと日水上人は、御講有のご奉修と日本団参をお祖師さまご降誕800年にゆずられたんだ」と言っています。純粋な信心に満ちたその言葉を聞くと「やはりパドロエイロゆずりのご信心だな」と感じます。
こうして自然に三祖一徹のご信心が引き継がれ、日水上人へのお給仕の思いが直接、仏祖へと繋がり、ブラジル仏教初祖たるお徳はさらに讃えられることになりましょう。
 しかし、名実ともにそうなるためには2年後の高祖大士ご降誕800年までに更なるご弘通ご奉公に精進しなければなりません。一人ひとりがただ奉賛歌を唄い讃えるばかりでなく、実際にパドロエイロのご精神を体得してご奉公させていただくことができたなら、本山からブラジル周りで佛立仏教が世界へと弘まっていくことになりましょう。
(コレイア日友記)