ほんもんぶつりゅうしゅう
2020年07月01日
フィリピンにおける新型コロナウイルスの影響と支援活動
昨年12月24日、大型台風の被害を受けたフィリピン。フィリピン教区では特に、首都マニラの南東に位置するパナイ島の海岸沿いの町ロハス市が暴風と高潮による甚大な被害を受けました。
 インターネットは普及しているものの通信環境はマチマチで、また、現地の混乱も相俟って状況の把握に時間がかかりましたが、2月までに2度現地を訪問し、支援活動を兼ねての巡回助行をさせていただきました。  
一通りのご奉公が終了し、お助行を通じてたくさんの入信希望者ができるなど今後のご弘通に明るい兆しが見えてきた、そんな中での新型コロナウイルス禍でした。
フィリピンでは3月中旬から順次、各都市や地区で新型コロナ対策として政府が封鎖(ロックダウン)を発令。それも、島ごとの封鎖ではなく、自治体ごとでの封鎖となり住民以外の流入は禁止。住民の生活にかけられた制限はとても厳しいものでした。
フィリピンのご信者さんは慢性的な貧困に悩む方々がほとんどです。平時においても、仕事をして日銭を稼ぐという暮らしですから、今回の封鎖により、みなさん仕事をすることができず、その結果、毎日の食料や水、生活必需品を買うお金がない、という状況に追い込まれてしまったのです。
3月20日、パナイ島ロハス市のリーダー、グウェンドリン・レイエスさんからSOSのメッセージが届きました。同市の中でも貧しいご信者さん約20世帯が住むカボラカン地区に出かけたところ、食料や水が買えずに皆さんが困っている、との内容でした。すでに自己資金で米10袋など購入し、小分けして配ったそうですが、まだ足りない、という訴えでした。
一方、ネグロス島バゴ市在住のある家族はお子さんが4人いるのですが、お父さんが病気の治療中、お母さんが怪我で、2人とも仕事ができないという状況でした。心配になり、ご長女に連絡をしてみると、日々の食料を買うことも、お父さんの薬を買うこともできず困り果てていました。
このように各地のご信者が、命の危険とも言えるひっ迫した状況下にあることが分かり、緊急の支援活動をすることになりました。蒲田久遠寺・加藤日遠上人、また、一部の他寺院のご信者からもご有志をいただき、遠妙寺本寺、末寺まで合わせますと合計で100万円を超える多額の支援金をお預かりしました。
3月23日より5月末にかけて数回にわたり、マニラ首都圏・ケソン市、パナイ島ロハス市・アルタバス地区・サラ地区、ネグロス島バゴ市・ミニン地区・ラグランハ地区に送金し、各地のリーダーからご信者宅に支援金や米などの物資を届けるかたちでの支援ご奉公をさせていただきました。
同時にSNSを活用して、日本の朝参詣に合わせて各自自宅にてお看経をいただくとか、別院近隣の住民は別院にて朝参詣をするなど、各家庭に対し信行面での個別のアドバイスをさせていただいております。また、個人でできる感染防止対策の方法について私たちが知りうる限りの方法を現地のタガログ語に翻訳してご披露させていただきました。
フィリピンのご信者方はきちんとした医療サービスが受けられません。感染防止をしようにも、日本とは違って石鹸や手を消毒する薬剤は乏しく、蛇口をひねってもきれいな水は出てきません。そんな中での感染への不安は、私たち以上のはずです。台風被災に続いてのことで、現地のご信者は大変な状況に追い込まれています。
それでも、慣れないながらもご祈願に励まれております。自主的にお助行をさせていただく方や、口唱会を開催するご信者、自分の支援金を他のご信者に譲るリーダーがいらっしゃったりとこちらが感動をもらうこともありました。しかもご祈願の際に、自分のことだけでも手一杯であるはずなのに、日本の私たちのこともご祈願くださっているそうで、その心がとても有り難く思いました。
 また、このような状況でもご利益をいただく方がいます。パナイ島サラ地区にヴィンセントくんという高校生くらいの青年がいます。昨年夏に現地を訪問した際、彼のお母さん(ご信者)から「急に息子が立つことも歩くこともできなくなった。家に来てほしい」と声をかけられました。
何の前触れもなく背中から首にかけて痛みを伴う痺れが出てきて腰から下が立たなくなった、とのことで、苛立ちを何とか抑え込もうとする表情で、ベッドの上で壁に寄りかかって座っている彼の姿がとても痛々しかったです。
謗法を払い、家族も入信、そして本人には「身体回復したら私たちと一緒にご弘通ご奉公させていただくことを誓ってください。その先には想像したこともないような将来があるんだよ」と伝え、毎日のお看経とお供水をたくさんいただくよう勧めておりました。以降、現地に渡航する際はお助行に伺い、また、お寺の朝参詣でも毎朝ご祈願が上がっておりました。
伺う度に彼の表情が少しずつ落ち着いてはきたものの、なかなか身体が回復する様子がなく、この重い病状に対して、ひと月半に1回というペースでしかお助行に伺えないことが歯痒く、申し訳なく思っておりました。
2月以降は日本でのご信心の研修を終えたレオナルド・マティリンくんが毎週1回、片道3時間かけてお助行に通うようになりました。同じ国民同士でのお助行はきっと心強かったことと思います。
そんなヴィンセントくんですが、6月3日、徐々に回復が見られるようになり、つたい歩きができるようになったと嬉しい報告が届きました。筋肉が衰えてしまったためリハビリが必要ですが、大きなご利益が現れてきています。
新型コロナ禍により、3月以降の現地でのご奉公予定がやむなく中止となったため、各地のご信者さんに対しての顔を合わせての応援や、サポートができず心苦しく思っておりましたが、そのような中での有難い出来事に感動し、いよいよ励んでいかねばと強く思った次第です。
6月に入り少し明るい兆しが見えつつありますが、依然、感染者は多くまだまだ厳しい状況が続いております。1日も早くこの状況が終息するよう、フィリピンのご信者方とともに困難を乗り越え、ともに信心増進させていただけるよう、御宝前にご祈願させていただきます。
遠妙寺フィリピン教区受持ち 田原彰行 
前・事務局国際部部長 福本容子