ほんもんぶつりゅうしゅう
2018年09月01日
海外弘通だより~サンマリノ編 大反響の『トランクの中の日本』展 晩餐会でプロジェクションマッピング
開館後、サンマリノはもちろん、日本人、イタリア、ロシア、ウクライナ、ポーランド、さらにはアジア圏などからの観光客も多数来館。年齢層もさまざまでイタリア語と英語に訳された展示をじっくりと鑑賞する姿が見られました。ロシア人の来館者のひとりは涙を流しながら館長に質問し、モスクワでもぜひ開催してほしいと要望する光景も見受けられました。
焼き場に立つ少年の写真はもちろんのこと、オダネル氏が撮影した写真と写真に添えられた心情をたどる同展示は見る者にとっても大きな衝撃を与え、深く戦争について感じ考える機会を与えていることを実感しました。

6月30日、リベルタ広場が赤く染まる夕暮れから始められた「サンマリノ・ニッポンまつり」公式晩餐会は、サンマリノ共和国文化教育省の大臣、外務大臣、平和大臣などが列席し、サンマリノ日本友好協会関係者など聖・日両国から約200名余りが参加。琴の演奏にはじまり、宮中儀礼のひとつである庖丁式の実演、さらに和太鼓の演奏もあり有意義な文化交流のレセプションが執り行われました。
晩餐会の最後には、サンマリノ大学と当展示のコラボレーションからなるプロジェクションマッピングが、国会議事堂をスクリーンに上映されました。映像を担当したサンマリノ大学のリッカルド・バリーニ教授は、西洋から見た東洋、サンマリノから想像した日本を映像で表現したと説明。
西洋の要素と東洋の要素が混ざり合っている様を表現し、さらに画像だけではなく音楽においても西洋と東洋の融合を表現したといいます。楽曲においてもサンマリノらしい楽器と日本らしい楽器の音源を採用、そして水の音を使うことによって交流や平等を表現したいと説明しました。
サンマリノでは異例となる国会議事堂をスクリーンにしたプロジェクションマッピングは説明の通り東西文化の融合と平和へのメッセージに溢れたものでした。上映が始まると歓声が沸きましたが、焼き場に立つ少年の写真などが映し出された瞬間には会場は祈るように静かになっていました。
この長崎で撮影された少年の写真が映し出された後、柿の木が成長してゆくシーンがありました。これは日本からイタリアに送られた柿の木で、しかも長崎で被爆し奇跡的に生き残った柿の木だというのです。長崎の爆心地から約900メートル、長崎市の若草町というところにあった樹齢150年の木を元にしているということでした。その柿の木を再生のシンボルとして、この平和を祈る機会に映し出そうと盛り込んだのだそうです。
長松館長からは「本当にすばらしいビデオマッピングをありがとうございました。パラッツオ・パブリコ(国会議事堂)の中に少年の写真が映り、涙が溢れました。サンマリノ大学、プラネットエキスプレスのスタッフのみなさまに心から御礼申し上げます。
この塔より大きな塔は他の国や町にもあるでしょう。ビデオマッピングもこれより大規模なものがあるかもしれません。しかし、これほど文化の違いを一つにし、宗教の違いも一つにしたビデオマッピングが、この自由と平和を愛するサンマリノ共和国の特別な塔に投影された意義は量り知れません。このタワーは地球の平和を発信する、精神的な意味で、どこよりも大きなタワーのように感じました。
ちょうど今日、長崎からメッセージが届きました。日本グラフィックデザイナー協会の長崎地区がひとつの声明を発表したのです。
『NAGASAKI BEYOND
国を越えて、民族を越えて、
宗教を越えて、憎しみを超えて、
悲しみを超えて、ただひたすらに平和を願う。
今、長崎から世界へ。』
というメッセージでした。
私は今、サンマリノから世界へだと思います。本当にありがとうございました」と挨拶があり、満場の拍手の中で晩餐会は幕を閉じました。
      (つづく)