ほんもんぶつりゅうしゅう
2020年11月01日
佛立この人  インド・チベット仏教の研究により瑞宝重光章を受章
第1支庁・誕生寺(住職・西村日要師)所属の御牧克己氏(73歳)は、令和2年度春の叙勲において瑞宝重光章を受章された。
 瑞宝重光章は、公共的な職務の複雑度、困難度、責任の程度等の評価において特に重要と認められる職務を果たし成績をあげた人に対して授与される瑞宝章第2位の勲章である。その受章者には高裁判事や大学の学長などが多く、文化系は数少ない。御牧氏はインド仏教研究とチベット研究の分野における長年の教育研究の功労が称えられての受章である。同じ分野で過去には故・長尾雅人氏(京都大学名誉教授・チベット仏教学者)も受章されている。
 御牧氏は、誕生寺第4世住職・御牧日煌上人のご子息である。昭和44年京都大学文学部哲学科(仏教学専攻)を卒業後、同大学院文学研究科修士課程(宗教学専攻)・博士課程を経て、昭和47年渡仏しパリ第3大学博士課程に編入学、同50年6月同課程(インド学専攻)を修了し、Ph.D.(哲学博士号)の学位を取得された。その後京都大学人文科学研究所助手、京都大学文学部助教授となり、平成4年1月に教授に昇任。平成8年4月に大学院文学研究科教授、同22年に退任後京都大学名誉教授となられた現在でも、研究とともに同大学にて後進研究者の育成に尽力されている。
 御牧氏の功績はインド仏教・チベット研究の伝統を継承発展させた仏教学者として、日本国内よりもむしろ海外において知られ、仏文英文による著書・論文は国際的に高い評価を得ている。昭和55年に日本印度仏教学会賞を受賞。平成18年には日本学士院会員に選定された(佛立新聞平成19年3月号「佛立この人」に掲載)。宗門においては妙講一座の英訳等など大きくご助力いただき、平成25年には佛立研究所顧問に就任いただいている。
 御牧氏の研究に欠かすことのできない仏教関連の蔵書はおよそ1万点にも及び、今では入手困難なものや体系的に収集された貴重な書籍が多数ある。それを宗門に寄贈くださる予定で、10分の1ほどではあるが宗務本庁宿泊棟1階に設置された「御牧文庫」にすでに保管されている。蔵書は研究者として現役の間は使用されるが、今後少しづつ整理されながら文庫に寄贈されるという。この蔵書は宗門の大きな財産となるものである。
 現在もインド・チベット仏教の研究一筋に、チベット大蔵経(ナルタン版)のテンギュル(論疏部)の目録を作成中との事で、他にもブッダチャリタ(仏伝)の再出版にも携わられる等、第一線にてご活躍である。また、これらの書物も文庫に寄贈されるとの事で、誠に有難い次第である。
 ご信心においても、自坊誕生寺の夏期参詣には今年も皆参され、もう何度も皆参されている。御尊父・日煌上人の親友であられた18世日地上人より勧められた得度は時機叶わず助教授となられたが、仏教研究者として信心堅固にご奉公に励まれている。
 ハンブルグ大学留学中にウィンブルドンでイワン・レンドルとボリス・ベッカーが対戦する映像を見て出会われた趣味のテニスは今でも現役との事で、日本テニス協会の指導員の資格もお持ちである。大学のテニスコートで毎日昼休みの時間に汗を流されているが、今はコロナ禍によりコートが使用禁止となり、テニスができないのが一番辛いと話される。
 瑞宝重光章の伝達式は5月12日の予定であったが、コロナ禍により延期、中綬章以下の式典は中止して7月31日に行われ、皇居正殿松の間で内閣総理大臣より拝受された後、豊明殿にて天皇陛下に拝謁された。