日蓮聖人のお手紙を通して学ぶ佛立信者のご信心と人生

日蓮聖人のお手紙を通して学ぶ 佛立信者のご信心と人生 その32

「法華経は五味(ごみ)の主(あるじ)と申す法門は本門の法門なり。……法華経の題目は一切経の神(たましい)、一切経の眼目(げんもく)なり。」(曾谷殿御返事 佛立版御妙判集第3巻245頁)
 
 右の御文は日蓮聖人が曾谷教信と称した当時のご信者へのご消息の一節です。
 中国の随の時代(今から約1,550年前)に活躍した名僧であり学者であった天台大師智顗(ちぎ)という方は厖大な量の仏教経典を精密に分類、整理、大系化するという業績を残しました。
 そうした作業の中で天台大師は釈尊が説かれた教え、ご法門を説かれた年代ごとにざっくりと5つの時期に分類しました。すなわち華厳(けごん)時(じ)、阿含(あごん)時(じ)、方(ほう)等(どう)時(じ)、般若(はんにゃ)時(じ)、法華(ほっけ)時(じ)の五時で、これを「五時判(ごじはん)」といいます。
 これら5つの時期に区分けされた教え、ご法門のうち初期から中期に説かれた華厳時、阿含時、方等時、般若時の教えは後期、ご晩年に説かれた法華時と称される教え、すなわち法華経の教えを説くための方便、すなわち根本の教えを説き明かすための準備、手立てとして説かれた教えであると判定しました。
 天台大師がこのことを説明するために用いた譬えが「五味」です。これは釈尊の教えを牛の乳に譬えたもので、牛の乳が搾りたてから次第に熟成され、ついにはチーズのようなまったりした味わいに変化していくように、釈尊の教えもその深みを増していくのだとしたのです。そして法華経の教えこそすべての衆生に利益を与え、まことの悟りの境地に人々を導きうる最高の味わいを持った教えであると結論づけたのです。これを「醍醐味(だいごみ)」と称します。
 日蓮聖人はこの天台大師の「五時判」に基づいて、この5つの時期に分けて説かれた教えを生みだしたのはどなたであるか、という観点から、さらに究極の教えを絞り込んでいかれたのです。つまり、譬えとしての牛の乳を生み出したのはどなたかという観点です。
 それは一応は釈尊です。ところが釈尊はそのご晩年、自身の本体(本地)は永遠のいのちを備えた久遠実成の仏であるということを明かされます。それが法華経の如来寿量品です。そして、その上で説かれた教えが法華経の第15章から第22章にいたる8章、すなわち本門八品の教えです。日蓮聖人は久遠本仏としての釈尊が説かれた教えこそが五味を生み出す根源の教えであるとみなされ、これを「五味主の法門」とされたのです。
 法華経の中でも本門八品の教えは他の教えと並列的に勝劣浅深を論じる位置にあるのではなく、牛に譬えるなら乳を生み出す牛という位置にあるというのが日蓮聖人の教示の核となるご法門です。
 この法華経本門八品の御法門は久遠本仏によって地涌の菩薩方、すなわち上行菩薩を上首とする本化の菩薩に対して説かれ、この御法門に基づいて南無妙法蓮華経と唱える口唱行を如来神力品において末法の世の人々に伝え弘めるよう勧められます。これを上行付嘱といいます。
 日蓮聖人はまさに上行菩薩のお生まれかわり、すなわち末法有縁の大導師であったのです。
 私たち佛立教講が受持口唱させていただく本門八品所顕、上行所伝の御題目は「一切経の神(たましい)、一切経の眼目」であるのです。つまり「本物の御題目」なのです。